若手はAI時代に不利なのか

AIによって、若手がスキルを身につける機会を失うのではないかという話がSNSやニュースで聞こえてきます。従来のOJTでは、アシスタント的な仕事を若手や新人に任せながら育成してきましたが、そうした仕事がAIに代替されるからということです。

一方、AIをうまく活用し、そこに人ならではの付加価値を加えるスキルをどう獲得するのかという視点に立つと、必ずしも若手が不利であるとも限りません。むしろ、AIに慣れた世代の方が適応しやすいのではないかという意見もあります。

Deloitteの調査によれば、エントリーレベルの人材にとってのAIの影響として最も多く挙げられたのは「学習とキャリア成長の加速」でした。AIは若手の成長機会を奪うどころか、むしろ加速するものとして受け止められているようです。

Accelerated learning and career growth are the top cited impacts of AI for entry-level workers. 

出典: Deloitte, “2026 Global Gen Z and Millennial Survey,” 2026

しかし、実際に人材の能力は高まっているのでしょうか。注目すべきは、同じ若手の中でもAIの活用によって得られる成果に大きな差があることです。

KPMGとテキサス大学オースティン校が若手プロフェッショナルを対象に行った調査では、AIを利用した人が一様に高い成果を出したわけではなく差があることが示唆されました。

若手社員のAI活用では、なぜ成果に大きな差がつくのか 大規模調査で判明した3つのパフォーマンス属性 | ビジネススキル|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
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この記事によると、AIエージェント単独と人がAIを活用したアウトプットを比較した場合、50.1%がAIエージェント単独を上回り、25.8%が同等、24.1%が下回ったということでした。

また、このパフォーマンスの差と、批判的思考力、AIリテラシーや領域専門知識といった基礎的スキルとの関連が見いだされなかったという結果もありました。

これは非常に重要な観点で、少なくとも、こうした基礎的なスキルの高さだけでは、AI活用によるパフォーマンスの差を説明できないことを示唆しています。

一見、生産的に見えるAI委任者

私がここで注目したのは、AIと同等のパフォーマンスを出している層です。記事ではこの層のことを「AI委任者」と命名しています。

AIを手早く活用することでアウトプットの一定の品質を保ちつつ、素早く結果を出すことができるため、一見すると生産的に見えます。

しかし、AIだけで対応できないような複雑で整っていないタスクには対応できなさそうに見えます。記事ではこのように言い切っています。

彼らは概して、AIのアウトプットをさほど吟味せずに受け入れ、自身の推論を加えることもわずかで、付加価値をほとんど、あるいはまったく提供しなかった。

こうした層はある意味で賢くAIを活用でき生産的に見えます。しかし、それはAI以上の成果を生み出せないリスクを持っています。

問題は、この違いがアウトプットだけを見ていては気づきにくく、そのまま能力差が蓄積していくことです。

実際、私もデジタル人材育成の現場で同様の経験をしています。