ピープルアナリティクスに取り組みはじめたデータアナリストや人事担当者の方から、時折「ピープルアナリティクスを学ぶときに、ちょうどよい資格はないですか?」という質問をいただくことがあります。

また、大学で学部生で講義をしているときには「ピープルアナリストになるために資格は必要ですか?」とよく聞かれます。

ピープルアナリティクスをする上で資格が必要かというと必ずしもそうではありません。しかし、独学するときに資格を活用するのはとても良いアイデアです。データサイエンスの土台を学ぶ上で、よいガイドになるからです。

この記事では、人事担当者がピープルアナリティクスを学ぶとき、何をどこまで学べばよいかを資格の観点からガイドします。

おすすめ資格6選のサマリ

ピープルアナリティクスに役立つ主な資格を、学べる内容と対象者ごとに整理しました。

資格 主に学べること 向いている人
統計検定 統計・分析 データ分析者
ピープルアナリスト・ベーシック PA実務全般 人事担当者
IIBA-CBDA 課題設定・意思決定 分析リーダー
人事データ保護士 法務・ガバナンス 人事担当者
ISO 30414 リードコンサルタント 人的資本測定 開示・人的資本担当
データマネジメント試験 データ整備・管理 人事データ管理担当

それぞれの資格について順に解説していきます。

統計検定

統計検定:Japan Statistical Society Certificate
統計検定の公式ウェブサイトです。 「統計検定」は、 日本統計学会が公式に認定している全国統一試験です。

まずはじめにおすすめするのは、日本統計学会が認定している「統計検定」です。国内のデータサイエンスの資格試験としては歴史が長く、定評のある資格です。基礎レベルの4級から専門・研究レベルの1級まであり、段階的にスキルアップできるのが特徴です。

この資格が登場する前は、統計学の入門書やWebだけが頼りでしたが、著書によってスタンスが異なるなど王道を知ることが難しい時期がありました。しかし、統計検定の登場により、まずはここから学べばよいという道が見えたのが大きいと感じています。

人事担当者の方には、まず3級を目指してはいかがでしょうかとお伝えしています。その上で、人事データアナリスト目指すのであれば2級レベルのスキルがあると、ある程度の土台ができるはずです。

一方、PythonやRを使ってゴリゴリ分析したいという方に向けては、統計検定準1級や統計検定データサイエンス発展もおすすめです。

ピープルアナリスト・ベーシック

『ピープルアナリスト・ベーシック』 資格認定講座 | 一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
人材データを分析・可視化して人と経営の未来に活かすピープルアナリティクスと、それを牽引するHRテクノロジーの活用を「産・学・官」で普及・推進する団体です

続いて人事の方にお勧めしているのが「ピープルアナリスト・ベーシック」です。こちらは一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会による認定資格で、人事でデータ活用を始める際に土台となるスキルや知識を網羅的に学べるのが特徴です。

問題設定や分析プロジェクトのマネジメントなど、技術以外のトピックを網羅しており、データアナリストと協働する人事担当者にも有用な講座になっています。私もこの資格作りに参加しており、プロジェクトの進め方について実践知を投入しました。

未経験の方を対象とした講座であるため難易度は優しめになっておりますが、プロジェクトや活動を網羅した実践知であり、様々な場面で利活用できるナレッジとしても有用です。

IIBA-CBDA

Business Analysis Certification | Business Data Analytics Certification (IIBA®-CBDA) | IIBA®
IIBA-CBDA certification validates your ability to support business analytics initiatives and connect analysis to decisions in an AI-driven data landscape.

IIBA-CBDAはビジネスデータ分析のプロフェッショナルであることを証明する国際的な認定資格で、ビジネスアナリシスの国際団体である International Institute of Business Analysis (IIBA) が認定するものです。ビジネスアナリシスの資格であるCBAPで知られる団体ですね。

IIBA-CBDAは知る人ぞ知る資格で、国内で取得している人はほとんど見かけません。しかし、ビジネスデータサイエンスを実践する上で重要なビジネス課題の設定方法や、活動サイクルの回し方なども整理されていて有用です。

そのため、資格の取得するかどうかというより、公式テキストである「ビジネスデータアナリティクス・ガイド」をおすすめしています。やや高額なテキストですが、IIBA会員になると無料でダウンロードできます。ピープルアナリティクスを実践している中で悩んでいたころに、このガイドの英語版を入手してヒントを得ていました。今は日本語版が出版されています。

人事データ保護士

人事データ保護士 資格認定講座 | 一般社団法人ピープルアナリティクス HRテクノロジー協会
一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会では、2021年度より「人事データ保護士(HR DATA Protection Expert)」の資格制度をスタートいたします。

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会による認定資格で、法令に基づいて人事データを公正に取り扱えるようになることを目指します。

アカデミックな専門家、弁護士、実務家が協力して講座を開発しており、専門的な立場から公正なコンプライアンスを学べるのが特徴です。ピープルアナリティクスや人事データのマネジメントに取り組む人事担当者に人気の資格で、順調に認定者が増えています。

今後HR分野でのAIの導入が進んでいくと思われますが、現代のAIはデータがあってこそ動くものです。そうした状況の中で、法制度との関係はどうなっているのか、どのようにデータを活用していけばよいかを考えるためのガイドとなるはずです。

ISO 30414 リードコンサルタント

個人コンサルティング資格|株式会社HCプロデュース
人的資本に関するあらゆる経営課題に対して最適なソリューションを提供することで、持続的な成長やイノベーションの創発に貢献します。

人的資本開示の国際規格であるISO 30414に基づき、企業の人的資本情報の測定や分析、開示、認証取得を専門的に支援できることを示す認定資格です。株式会社HCプロデュースなどの認証機関が講座を開いています。

人的資本情報の開示を行っている企業が必ず認定を受けているわけではありませんが、人的資本情報を開示する際に、何をどう測って開示すべきなのか?という疑問に答える上で、ISO 30414は一つの基準を示すものです。

一方、ISO 30414の規格書原典は人が読みやすいものではなく、解説が欲しいと思うようなものでもあります。その意味で、本認定資格はISO 30414を網羅的に学ぶ上で役立ちます。

データマネジメント試験

新試験制度のサンプル問題について | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「新試験制度のサンプル問題について」に関する情報です。

経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が準備を進めるデータマネジメントに関する国家資格です。AIの活用やDX推進に不可欠なデータの整備やマネジメントスキルを認定するものです。

こちらの資格は2027年より新設される予定となっており、本稿の執筆時点ではシラバス案が公開された状況です。しかし、IT教育業界やDX支援団体で話題となっており、注目が集まっています。

ピープルアナリティクスにしても、人事でのAI活用にしても、データがなければ価値を出すことはできません。一方、データマネジメントにコストを払わない企業や組織があったのも事実です。しかし、AIトランスフォーメーションの時代において、データを軽視できない状況になっています。その意味で、本資格の知見は今後ますます重要になるはずだと考えています。

演習型講座で学ぶ

本稿では資格を通してピープルアナリティクスを学ぶということで情報を整理してきました。ただし、資格を取れば即戦力になれるかというとそうではありません。資格による基礎的な土台を元に、実践を重ねながらリアルな場に落とし込んでいくことが大切だからです。そのため、資格の勉強と並行して、実務で実践していくことをお勧めします。

その一方で、実務での実践機会がなかなか得られないという方もいらっしゃるかと思います。そういった場合は、より実践的な講座を活用し、手を動かしながら学ぶのも有用です。例えば、次のように、サンプルデータを使って分析を学ぶことができる講座を活用することも一案です。

R/Pythonによる人事データ分析入門 e-Learning講座
この講座は、R/Pythonによる 人事データ分析手法の習得を目的としています。人事データ分析の専門家による充実した講義動画と組織経済実証研究所独自の教科書によって、最短距離で人事プロフェッショナルに必須なデータ分析スキルを習得していただきます。

こちらは、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会が提供する講座で、RまたはPythonで演習しながら分析技術を習得することができます。私は、Python講座の作成統括として講座作りに携わっています。

本で学ぶことの重要性

ここまでは何からしらのガイドに沿って学ぶメディアをご紹介してきましたが、最後におすすめしたいのが本で学ぶということです。

データアナリストやデータサイエンティストのようなプロフェッショナルの多くは、どこかの時点で専門書と対峙した経験を持っているものです。

そのきっかけは、実プロジェクトで壁に当たったとき、技術不足やドメイン知識のなさを痛感したとき、分析で価値を出せなかったときなど様々です。いずれにせよ、専門職のスキルアップには専門書と切っても切り離せません。

AIがありとあらゆる回答を出せる現代であるからこそ、そのアウトプットを精査するには高度な専門知見が必要です。本と対峙するということは、難解なコンセプトを自分の頭で考えて自分の腹に落とし込むことに繋がります。

資格はピープルアナリティクスの入口であり、実務と専門書との往復によって初めて実践的なスキルが身につきます。本サイトではピープルアナリティクスに役立つ本をまとめていますので、ぜひチャレンジしてみてください。

ピープルアナリティクスを学ぶ人におすすめする本
ピープルアナリティクスを学びたい人向けに、入門書・統計・人事・因果推論・人的資本経営などのおすすめ本を難易度別に紹介する。