ピープルアナリティクスでは、ファクトをベースに問題を発見し課題解決につなげていくことがポイントになります。これにより、人事に仮説検証型のプロセスを導入することができます。
この記事では人事における仮説検証のイメージをお伝えし、ピープルアナリティクスを人事にビルドインするための考え方(DDDIサイクル)をご紹介します。
ビジネスにおける仮説検証
ビジネスにおける仮説の検証とは、ビジネス上の施策を仮説をもって実施しその効果を振り返り軌道修正を図るような取り組み全般を指します。これはピープルアナリティクスに限らず、ビジネスの様々なシーンで活用されているアプローチです。
例えば、生産現場における改善や、WebマーケティングにおけるA/Bテストが代表的な仮説検証の例になります。
また、近年のスタートアップ企業の立ち上げでは、市場の課題とプロダクトのフィッティングを行うために仮説検証を繰り返すことがスタンダードになっています。このアプローチは、大企業の新規事業の立ち上げにも取り入れられ始めています。
なぜ人事に仮説検証が必要なのか?
それでは、なぜ人事業務においても仮説検証が必要なのでしょうか。
その理由の一つとして、人事業務自体に大きな変革の波が来ているということがあげられます。
例えば、
- 新卒一斉採用中心の時代から、中途人材活用へ。
- 会社主導のキャリア構築から、自らキャリアパスを描く時代へ。
- メンバーシップ型からジョブ型人事へ。
人事部門はこのような変化を見据えながら、経営戦略に合わせて柔軟に人事施策を打ちたてていくことが求められています。その一方で、こうした新しい局面では前例もなく、100%上手くいく唯一の施策を打ち立てることは難しいでしょう。
このような不確実性と立ち向かいながら施策を打つためには、仮説ベースでの試行とファクト(データ)に基づいた検証が重要になってきます。ピープルアナリティクスは人事業務に仮説検証型のプロセスを導入するための鍵といえます。
ピープルアナリティクスのDDDIサイクル
組織やビジネスにおける仮説検証では、以下のようなフェーズを繰り返していきます。クニラボでは、このサイクルをピープルアナリティクスのDDDIサイクルと呼んでいます。
- 問題を発見する (Detect)
- 問題を深掘りする (Dig)
- 施策を意思決定する (Decide)
- 施策を実行する (Implement)
このサイクルは、ピープルアナリティクスプロジェクトの経験則を独自に抽象化してまとめたものです。分析の目的によってかわってきますが、DDDIの各フェーズでデータを活用する場面があります。

従業員エンゲージメント施策でのDDDIサイクルの例
ここでは、人事における従業員エンゲージメント施策を例にとって、DDDIサイクルの流れを見ていきましょう。
従業員エンゲージメントとは、各々の従業員が自社に対してどのくらい想いを持っているか、また他人にすすめたいかという度合を示すものです。企業同士で比較した時に、従業員エンゲージメントが平均的に高い企業ほど、業績や労働生産性が高くなるという研究成果もだされており、企業の人事施策の中で重要視されてきました。
その一方で、会社・組織の中に目を向けた場合、具体的に何を改善していけばよいか個別に検討していかなくてはなりません。それぞれの組織で重要な経営課題や人事施策は異なるからです。以下、DDDIサイクルに沿った検討の流れを簡単に示します。
- 問題を発見する (Detect)この検討の一歩目としては、自組織の状況を把握して問題を捉えることです。例えば、例えば30代のエンゲージメントが急激に低下していることをキャッチしたとしましょう。
- 問題を深掘りする (Dig)
次に行うことは問題の影響範囲や原因を探っていくことです。この深掘りによって、30代だけでなく中途人材のエンゲージメントスコアが低く、定着に問題があることがわかったとすれば、その問題を解決するための施策を考える必要があるでしょう。
- 施策を意思決定する (Decide)
オンボーディングやミドルマネジメントの改善、採用基準の見直しなど広範囲のシナリオを検討していきます。ここで、エンゲージメントや組織環境の相互作用のメカニズムを完全に捉えることは難しいと考えるべきです。すなわち、検討した施策には不確実性が含まれており、施策を打ちながら改善していく必要があるのです。この一連のシナリオを施策としてまとめ、意思決定者の判断を仰ぐことになります。
- 施策を実行する (Implement)
改善施策に対してGOとなったら実際に施策を展開していきます。もし全社一斉に展開する場合は、ミドルや一般従業員それぞれに対して明確かつ丁寧なコミュニケーションをとっていく必要があるでしょう。この場合にこれまでの検討過程で得られたファクトを示すことは説得力を増します。
- 問題を発見する (Detect)
施策を実行した後には、それが狙い通りの効果を上げているか確認していきます。冒頭の問題発見フェーズに戻るわけですが、サイクルの一種目とは違ったアプローチで確認していくことになるでしょう。
もし、こうした議論を深めることなく従業員エンゲージメントの定期調査と全社的な底上げだけを行っていくとどうなるでしょうか?
この場合、目的感を見失って効果的な打ち手を打つことができないか、もしくはスコアがあがっても経営課題にたどり着かないなどの壁にあたってしまう恐れがあります。
ピープルアナリティクスを人事業務にビルドインする
ピープルアナリティクスは人事業務に仮説検証のスタイルを導入し、戦略人事の実現を後押しするものです。従業員エンゲージメントの例でみたように、ピープルアナリティクスは人事戦略に即してこそ有用です。逆の観点では、データ分析は業務や事業の目標を達成するための手段の一つにすぎません。
ピープルアナリティクスを人事業務に取り入れるためには、戦略と仮説をもって業務施策を回していくことが重要になります。本稿で示したDDDIサイクルは、ピープルアナリティクス導入後の姿をシンプルに表しています。