ファクト(データ)をベースに意思決定を行い、効果的な人事施策を打つことで戦略人事を実現するための一連の活動をピープルアナリティクスといいます。

2010年代後半より、国内においてもピープルアナリティクスが求められるようになってきました。現在、多くの企業が人事データの分析に取り組み、施策の意思決定や業務効率化、さらには従業員とのコミュニケーションに活用しています。

これらの取り組みはそれぞれ狙いが異なるもので、取り組むべきタイミングや分析アプローチが大きく変わってきます。それぞれの概要と取り組み例を以下の表にまとめました。

データ活用の方向性

人事業務上の狙い

取り組み例

意思決定支援

ファクトから問題と課題を発見し課題解決に至る施策を立案

ハイパフォーマーの行動要因分析
エンゲージメントの影響調査
研修などの施策効果の検証

業務効率化

人手で行っている人事関連作業をデータを用いて効率化

所属別時間外勤務時間数の整理
勤怠に関するアラートの自動化
社内サーベイ分析の効率化

コミュニケーション

従業員に対して施策の意図を伝えフィードバックを受ける

ダッシュボードによる勤怠情報の提供
社内サーベイを基にした対話
キャリアパスのレコメンド

これらの3つの方向性について、掘り下げてみます。

意思決定支援のためのピープルアナリティクス

これらの取り組みの中で近年着目されているのが意思決定支援です。人事施策のGO/NoGO判断を行うときにデータから得られた洞察を活用するという方向性です。

意思決定にデータを使うメリットは、勘や経験といった俗人的な物差しでなくファクトにもとづく客観的な情報を活用できることです。

人事以外の領域、例えばマーケティングや生産プロセスの改善などの分野では、古くからデータを基にした意思決定が取り入れられてきました。しかし、人事分野においては、意思決定におけるデータ活用はこれから発展途上の段階です。

業務効率化のためのピープルアナリティクス

ITシステムの歴史から見たとき、人事給与システムは長い歴史を持っています。つまり、人的リソース管理や給与・社会保険計算のプロセスの多くはデジタル化されています。

その一方で、既存の人事給与システムの枠を超えた業務が発生した場合、しばしば手作業が発生することがあります。

例えば、以下のような場面です。

  • 時間外や勤怠のイレギュラー処理
  • 関連する他の社内システムとの連携
  • 配置やタレント育成施策を検討する場面
  • 社内サーベイなど全社的に実施するイベント
  • 経営層の指示で突発的な検討事案が発生した場合

こうした場面では、多くの場合、既存の人事給与システムに搭載されたデータ出力機能を用いてデータを出力することになるでしょう。その上で、Excel等を用いて作業をすることが常態化しているのではないでしょうか。

これらの作業の多くは人事給与システムに蓄積されたデータを基に、他の何らかの情報やデータを掛け合わせて調査・分析・提示ような作業が多くを占めます。既存の人事給与システムは、システム内のプロセスに特化しているため、柔軟なイベント対応が難しいのです。

この課題に対して、基盤や仕組みを整備し、人事担当者の負荷を下げることもピープルアナリティクスのひとつの出口になります。

コミュニケーションのためのピープルアナリティクス

上にあげた2のテーマは主に人事部門内の業務に焦点をあてたものでした。

一方、人事部門は人事施策を全社に展開するため、事業部門の管理職や一般従業員に対して双方向のコミュニケーションを取っていきます。このコミュニケーションにおいて、データを活用することで、その効果を上げることが可能です。例えば、エンゲージメント調査などの社内サーベイの収集とフィードバックは双方向コミュニケーションの典型例といえます。

また、近年キャリアの自律化が進行しつつあり、人事部門の役割も変化しています。会社・組織が画一的なキャリアパスを提示すのではなく、従業員一人ひとりが自ら方向性を考え、学び、戦略的に動く必要がでてきました。

人事部門はこうした変化を踏まえて従業員に様々な情報を提供していくことが求められていますが、今後はよりパーソナライズされた情報を必要になるでしょう。そのためにデータを上手く活用していくことが大切になります。

まとめ

ピープルアナリティクスの方向性について、意思決定支援、業務効率化、コミュニケーションという3つの切り口で整理しました。