ニックネーム「ヒカリコ」さんから、ピープルアナリティクスのテーマ決めに関する質問をいただきました。


質問💬

人事内でデータ分析に取り組むことになり、これまでエンゲージメント調査の整理や残業時間の見える化をやってみました。ただ、次に何を分析したらよいか思いつかず苦戦しています。分析テーマってどうやって見つければいいのでしょうか?


回答📝

質問ありがとうございます。ピープルアナリティクスのテーマ決めには悩みますよね。

すでに実施されているエンゲージメント調査や残業の分析というのは、どの組織でも求められるテーマでもあります。そこから取り組まれたというのは良いことだと思います。

さて、どうやってテーマを広げるかということですが、大きく分けて3つのやり方があります。

  • 人事部門として重視している人事施策から考えてみる。
  • 直近の1年間で取り組んだ人事施策から考えてみる。
  • チームで話しているときに出てきた言葉を拾いあげて調べてみる。

それぞれ順にみていきましょう。

人事部門として重視している人事施策から考えてみる

経営や業務課題から分析テーマを考えるという方法です。一言でいうとトップダウン。これはビジネスにおけるデータ分析の王道でもあり、人事に限らず様々な分野で実践されているアプローチです。

ピープルアナリティクスの場合、まずは所属している人事部門やコーポレート部門の重点施策を見てみましょう。どの会社にも人事組織は必ずあるものですが、その組織で「今」走っている施策は異なるものです。

例えば、Webでざっと調べてみると、以下のような施策が見つかりました。どれも典型的な人事施策に見えますが、会社によって重要ポイントが異なることが分かりますね。

  • A社:少子高齢社会への対応として、等級・評価・賃金制度の見直しを実施。
  • B社:管理職対象のジョブ型人事制度を導入。
  • C社:知識・スキルに応じた多様な等級制度を新設。

では、ヒカリコさんの会社ではどのような施策が打ち出されているでしょうか。中期事業計画や今年度の人事部門の方針、あるいは、人的資本レポートに記載されているかもしれません。

もちろん、そこに書かれている言葉は抽象度が高く、現場とは距離があるように感じられることもあるでしょう。また、検討中で社内外に公表されていない施策も必ずあります。そういった施策は人事部内では議論されているはずですので、そこから拾うというのも手です。

そうして得られた施策や方向性から分析テーマを見つけるのは難しいかもしれませんが、少なくともまず初めに考えるべき人事領域を見極めることはできるはずです。

例えば、上のあげたC社の例でいうと、「等級制度の見直し」または「タレントマネジメントの高度化」というキーワードが見えてきます。これらのキーワードをフックに人事部内でディスカッションを行い、人事として目指す方向性と現在地を確かめていけば、分析すべき課題が見えてくるはずです。

ただし、このアプローチは文化的にフィットしない場合もしばしばありますので、以下の2つのアプローチも見てみてください。

直近の1年間で取り組んだ人事施策から考えてみる

ひとつ目のアプローチはトップダウン型であり、あるべき姿からバックキャストして考える方法でした。これは明快でよい面があるのですが、人事業務と相性が良くないこともあります。特に、メンバーシップ型人事制度をとる国内企業には馴染みにくい印象があります。

そこで、二つ目のアプローチとして、現状を把握するところから始めてみることをおすすめしています。これまでに実施した人事施策を一つ取り上げて、データを使ってその振り返りをしてみよう、というアイデアです。

たとえば、とある人事チームでは従業員エンゲージメントの向上に取り組んだとしましょう。具体的には全社に向けてe-Learningを実施したり、社内報に成功事例を掲載したり。こうしたことを施策として実施していたなら、効果があったのか気になりますね。

効果検証というと非常に深いテーマですが、まずは経年でエンゲージメントのスコアがどう変化してきたかを見てみるところからスタートしてみましょう。すでに取り組んでいるなら、年代や性別、職種、等級、所属などで細分化して比較していきます。これら一連の行為が「エンゲージメント施策の課題を発見する」というテーマにつながります。

これは典型的な例でしたが、以下の質問を考えてみてください。何か人事部として取り組んだことが浮かんでこないでしょうか。

  • ここ1年で人事部として何に取り組んだだろう?
  • 先月の人事部会で報告があった取り組みは?
  • 直近で全社に向けて人事部から発信した情報は?

ポイントは「つい最近取り組んだエピソードことを思い出す」ということです。定常業務だけでなく、中にはプロジェクト的なものもあるでしょう。それこそが、ヒカリコさんが所属している組織が重視している施策であるはずです。

このようにして重点施策らしきものが見つかりましたら、その施策を実施した結果どうなったのかデータを使って確かめてみましょう。それはデータを使って現在地を把握するタスクであり、新たな人事課題を見つける大切な一歩になります。

チームで話しているときに出てきた言葉を拾いあげて調べてみる

最後の方法は日常的な活動に着目したアプローチです。あえてデータ分析を意識しないでテーマを見つける方法で、ボトムアップ的なやり方になります。

人事部内では様々なミーティングが開催されていますよね。業務的な相談事から進捗会議、アイデア出し、他チームとの連携会議などなど。まずは、こうした会話の中で出てきたキーワードを拾っていきます。

季節によって変わってくると思いますが、採用プロセスの話や、法改正への対応、タレントマネジメントの話題、新しい研修企画の検討など様々な話が見つかるはずです。こうした話題こそが、人事部内で取り組んでいる業務であり、分析対象になり得る業務です。

それが見えてきたら、会話の中に潜む「意見」を拾い上げてメモしていきましょう。たとえば、次のような意見です。

「オンボーディングも課題だよね。中途採用者のエンゲージメントが心配
男女賃金格差を是正するために育児支援を検討しないと」
「自主的に教育を受講している人は成長速度が速いと思うんだよね」

人事の場合、一つの会議の中でテーマが左右に広がることも多いでしょう。こうしたミーティングはその流れのままに実施してくださいませ。

大切なのはミーティングの後です。出てきた意見を並べてみたとき、ファクトベースで語られた意見がどの程度あったか確認してください。数字に基づく意見もあれば、伝聞的な情報や、頭で想定した意見もあったはずです。そして、「それは本当かな?」と考えてみるのです。

ちなみに、上の例で太字にした部分は量的な言葉ですので、その大小を語るには本来は計量が必要です。しかし、直観的な意見であったり、小数のサンプルに基づく発言であったりすることも少なくありません。

すなわち、これを仮説に見立て、データを使って確かめることが一つのデータ分析テーマになりえます。

これはボトムアップなやり方ではありますが、日常業務の中にデータ分析を自然に取り込める方法ですので、ぜひ試してみてください。