はじめてデータ分析に取り組むときには「どうやって分析したらよいのだろう?」と悩むものです。しかし、それ以前にデータ分析の目的を整理することが大切で、分析アプローチの検討よりも難しいこともあります。
例えば、ハイパフォーマーの要因分析というテーマを考えたとき、どのように集計してモデル化するかと考えるよりも、なぜハイパフォーマーの分析をする必要があるのだろうかと考えることが大切になります。もし目的が曖昧なままで分析を進めてしまったら、分析プロセスが迷走するだけでなく、最終的なレポートは何にも活用されないかもしれません。私もそういった経験を何度もしています。
目的が大切というのは当たり前の話に感じられると思いますが、意識していてもストレートに解決できない場合もあります。データアナリストやデータサイエンティストの方でしたら、この問題に直面したことがあるのではないでしょうか。特に、ピープルアナリティクスのような新しい分野ではWhyよりもHowが先行してしまう場合もあるでしょう。コストセンターのKPI作りの難しさも背景にあります。
データ分析プロジェクトの立ち上げ時点で目的が曖昧なとき、データアナリストはクライアントにこういった質問を投げかけるかもしれません。
「データ分析には目的が大切です。目的は何でしょうか?」
「課題と仮説を言語化してください」
「何がしたいのですか?」
この質問によって目的がはっきりすればよいのですが、上手くいかないことが多い印象です。これらの質問に即座に回答が来るような状況であれば、議論の冒頭にクライアントから目的や課題を提示されるはずです。そうでないから目的がぼんやりとした状況にいると考えた方が無難です。したがって、こういった質問はあまり効力を発揮しません。
もっとも、仮にデータ分析の目的や検証すべき仮説が提示されたとしても、それを文字通りに受け取るのは少々リスクがあります。「それは本当に解くべき問題なのか?」と頭の中で考えながら丁寧にディスカッションを進めるのがよいでしょう。
さて、データ分析の目的が曖昧な状況で、かつ、目的を尋ねてもストレートな回答が得られないときにどうすればよいでしょうか?
私は、データ分析の結果が得られた後のアクションをお聞きするようにしています。これによって目的の輪郭が見えてきたり、目的そのものがないことがわかったりします。
具体的には以下のような形でお尋ねすることが多いです。
- 分析によって何らかの知見が得られたとして、それをどのように活用される予定でしょうか?
- もし分析によってAとBの差があることがわかったとしたら、どのような施策を打ちますか?
AとBの差が明確に分からなかったらどうしますか? - 予測モデルが構築できたとして、それをどのような場面で利用されますか?
- そのダッシュボードは誰がどのような場面で見るものなのでしょう?
人事部門の方がご覧になるのでしょうか。それとも各部署の管理職の方が日々向き合うものでしょうか。
これらの質問は分析の目的や現在の課題を明らかにする狙いがあります。単に「目的は何ですか?」と尋ねるのとは違い、建設的な議論ができることが多いです。イメージしやすい質問だからでしょうか。
一つの工夫として「クライアントの話を関心と建設的な疑問を持って聞く」という姿勢も大切です。そもそも関心がなければ事務的なヒアリングになってしまい、深いところに到達できません。また、目的を尋ねるという行為は抵抗的なニュアンスで受け取られる場合もありますので、アナリストはオープンで建設的な態度を持つことが重要です。
そして、これらのヒアリングを通して得られた情報はきちんと文章に落として共有しましょう。データ分析のストーリーをくっきりさせるためでもありますが、ミーティング参加者のコンセンサスを取ることができるからです。その文章に書き記されるのはミーティングで発言された言葉の要約ですが、人は発言する以上に頭でアレコレ考えるものです。そこをフォローアップするためにも議論を文字に落として確認することが大切だと考えています。